初夏のアヴァンチュール

社会人になった頃から音楽の嗜好がパンク/ニュー・ウェイブにシフトして、日本のポップスの新譜はあまり手が出なくなっていたが、店頭で目にした大貫妙子の新作『アヴァンチュール』はジャケットの雰囲気がそれまでとは全く違う印象で、つい手に取ってレジに向かった。

結構暑い日だった。家に帰る途中、国道沿いの喫茶店(当時、カフェとは言わなかった)に立ち寄り、ボンゴレのスパゲティ(当時、パスタという言い方はなかった)とオレンジの生ジュースを頼んだ。

一緒に買った「POPEYE」を読みながら食事したので小一時間は経っていたと思う。車に戻ると、助手席に置きっ放しだったレコード袋に直射日光が当たっていた。嫌な予感がしたが、後の祭りである。

初夏に車で出かけると、時々ふいに、あの大きく波打った『アヴァンチュール』の黒い盤面が目に浮かぶ。

[投稿者:この辺りの者でござる]


●本作のジャケット撮影は、映画『SUKITA』に出演している高橋靖子さんがスタイリストを担当、その時のちょっと良い話がブログに書かれています。
http://archive.fo/SvEf


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